2022.11.15
REPORT
【ライブレポート】Arcanamusica AGF SPECIAL STAGE
『アニメイトガールズフェスティバル2022』(以下、AGF2022)が、11月5日(土)・6日(日)の2日間に渡り池袋・サンシャインシティほかにて開催された。本稿では、その2日目の無料オンライン配信&リアル観覧イベントにトップバッターで出演した集英社×avexによる多次元プロジェクト・Arcanamusica(アルカナムジカ)の初ステージの模様をレポートする。
MV、音声、ボイスコミック、ソーシャルメディアコンテンツなどを“多”次元として展開していくメディアミックスプロジェクト・Arcanamusicaは、それぞれの登場人物が持つ「秘密」をテーマに物語が展開されていく。
突然インストールされた「アルカナムジカ」という謎の配信アプリに出会った川和、苺宮、五十島、渋吉、獣条の5人はアプリ内で付与された2曲をそれぞれがRiZ、闇殿«ダークパレス»、いっくん、シブキチ、レッジェとして歌唱、配信すると瞬く間に人気になる。「2月22日22時×××にお集まりください」とアプリ内で通知、指定された場所に行くと、案内役・スーに導かれ“なんでもひとつ願いが叶えてもらえる”至高の存在=「ワールド」を目指すこととなる。
そんなストーリーが目の前に広がったかのように、いよいよ彼らの初ライブがお披露目された。Arcanamusicaは、2022年2月22日にプロジェクトが発表されて以降、10週連続リリース企画として「アルカナムジカ」内で登場人物5人それぞれに与えられたタロットカードの「正位置」「逆位置」をモチーフとした曲を2曲発表。この日はこれら10曲の楽曲がスペシャルメドレーとして初披露された。
Arcanamusicaのテーマ曲「invisible world」をバックに、スクリーンに登場人物が描かれたタロットカードが横並び一列に配置されると、キャストがステージに迎え入れられ、川和静役の波多野翔、苺宮楽ノ進役のROβiN、MCを務めた五十島慈役の坂上晶、渋吉陸玖役の白石康介、獣条一希役の幡野智宏がそれぞれ自己紹介、MCの坂上晶はプロジェクトを説明。当日フルコーラスで初披露された9月14日リリースのプロジェクトテーマソング『invisible world』の装いからインスパイアされた衣装を身に纏い、ライブがスタートした。
2023年2月22日にリリースされる1stアルバムのタイトルも明らかになったこの日は、ファンにとってはより一層メモリアルな1日となったに違いない。
トップを飾ったのはリア充嫌いなプログラマー・川和静役の波多野翔。アプリ内で使用するアルカナネーム・RiZとして、3月2日にリリースした「正位置」楽曲『My role』をステージ中央で堂々と歌い上げた。波多野は、パソコンで見ている何気ない日常を切り取ったようなプログラミング言語のスクロール映像をバックに歌うが、淡々と冷静に歌い上げる彼から感じられたのは、社会に対する理不尽さ。ステージではずっしりとした鎧を纏ったような、登場人物が持つダークな雰囲気を放った。正も逆も、総(すべ)てが本物の世界へ——タロットカードでは「吊るされた男」がモチーフの川和静という人物が抱える秘密とは、一体なんなのだろうと思わずにはいられなかった。
続いてROβiNが登場すると、空気が一変、色濃さと華やかなパフォーマンスが観る者の目を奪った。自堕落な生活をしている動画配信者の苺宮楽ノ進・闇殿«ダークパレス»役を演じる彼のタロットカードは「悪魔」。「悪魔」の正位置は「裏切り」「拘束」「堕落」「破天荒」「嗜虐的」などの刹那な意味が含まれているが、奇怪な笑みを声高くあげると、ダンサンブルな正位置楽曲『その魔王殿は危なげな程に刹那的─。』をパフォーマンス。“艶やか”、“美しさ”といった形容がよく似合うROβiNだが、楽曲のラストではさらに目を見張るロングトーンとファルセットでステージに爪痕を残した。その美しさの下にも何か隠された秘密があるようだった。
タロットカード「司祭」がモチーフで、優しい教師の顔を持つも、そのプライベートは明かされていない社会科教師・五十島慈こといっくんを演じる坂上晶は、『フィルム越しのモノクローム』でスロウなダブステップに身を委ね、会場を心地よいチルアウトな空間にしていく。一礼し、紳士的な登場からも伺えたが、どこかアンニュイさを漂わせる彼は、他のメンバーとはうってかわって大人な魅力を感じさせた。甘いハイトーンヴォイスを響かせながら、“奪われることの無い自由”をピュアに訴えかけるように歌う姿は、どこか刹那的だった。
疾走感あふれる演奏とハンドクラップで活気付け。『You are my friend!』で縦横無尽に新境地を見せたのは、天真爛漫なお笑い芸人の渋吉陸玖ことシブキチ役の白石康介。「太陽」のタロットカードの印象どおりな陽気な笑顔やラップで会場をすっかりあたためたところで、メルヘンチックな世界を存分に展開した。笑顔で溢れた印象的なステージには、これまでのステージにはないエンタテインメント性の高い空間に、無邪気さをしっかり宿らせ、持ち前の明るさで躍進力のある煌びやかなムードを引き出していた。
出世街道まっしぐらな弁護士にも、悩みはつきものらしい。タロットカード「正義」の獣条一希ことレッジェ役の幡野智宏は、軽快なピアノアタックに捲し立てるようなナンバー『テノヒラダンサー』で支配的な“俺様”らしさを感じさせた。挑発的に会場を煽る攻めのステージは圧巻で、スキルの高い楽曲も安定して披露するほどの歌唱センスで会場を魅了した。
そこから映像のタロットカードの色がモノクロへ反転すると、ライブは後半戦の「逆位置」楽曲がスタート、レッジェの『ストレイアンサー』から景色を変える。Arcanamusicaはタロットカードをモチーフに楽曲が作られているが、出たカードの向きが逆さになると、「逆位置」になり、これによりタロットの「正位置」からカードの意味は変化する。あわせて物語の表情も変化に富む仕掛けになっているから面白い。そんなところを紐解くとこのArcanamusicaというプロジェクトの魅力は倍増。不安や葛藤を歌ったナンバーで違った一面を見せた幡野に続いて白石は、『Are you my friend…?』で「孤独感」「不安感」「第六感」を歌い、同じ“友達”がテーマな楽曲にも関わらず、先ほどとは異なるステージを見せる。自由を歌っていた坂上が『翡翠色のロゼアモール』で悲観的な感情を訴えかけるような求心力あるステージを見せたかと思えば、氷のようにクールな表情でステージに立つROβiNは、『その魔王殿は悲しい程にルルルルルー。』で<少年が受けた母性は見知らぬ顔の付与だった>という衝撃の歌い出しから、寂しく孤独な子守唄を会場にこだまさせた。『My song』を歌う波多野も『My song』とは一変し希望を歌い、歌い終わると別人のような満足気な表情を見せた。これまで私たちに見せてきた表情とは、全く違う。
そんなステージ展開も見事なものだったが、さらに圧倒されたのはスペシャルメドレーの後に披露された新曲『invisible world』。「それでは聞いてください」と白石が新曲を紹介し披露すると、個性の引き立つステージ展開に息を呑んだ。演奏後、「歌っていて楽しかった。」(ROβiN)、「これは良いライブになったんじゃないかと確信しております」(波多野)と話したように、5人の息はぴったり。坂上、白石、幡野の3人が畳み掛けるようにソロパートで一体感を高め、ROβiNのラップパート、狂ったような笑い声から波多野へ繋ぐ流れも秀逸であった。各々のキャラや声を自由自在に操りつつも、5人でしか出せない緩急、さらにクライマックスをきちんと支える幡野のコーラスで最強のチームワークを見せる。どこを取っても抜かりないステージには、敬意を払わずにはいられなかった。この日のステージへ向けた想いが感じ取れるパワフルなステージ。
ライブ後には言葉にならない感情を「皆んなが一緒にいて、わ〜ってなって」とステージ上での感動を伝えたROβiNから、2023年2月22日に1stアルバム『SPREAD』がリリースされることを発表。『SPREAD』というタイトルについて、坂上が「開く、広げる・展開するというタロットの意味があるんですね」と説明すると、これから始まる新章について触れ、白石は「(グッと)くるものがありすぎて、感動しっぱなしなんですけど、これからも5人で歩んでいきます。もっと、もっと高みを目指すので、応援よろしくお願いします」とファンに約束した。等身大のステージながらも、しっかりと着実に歩んだ一歩は、これから先の未来をしっかり照らしてくれるだろうと想像できるようなライブだった。登場人物の体現性はもちろんのこと、何より人の2面性や目に見えない“心の”世界をしっかりと目の前に広げた彼らのライブは、今を生きる私たちにとって必要な視点を提示してくれるものだった。
2023年2月22日は1stアルバム『SPREAD』発売日はプロジェクトがスタートした記念日でもあり、物語が動き出した大事な日だ。頭角を現した期待の新人は、結成から一年の節目にいったいどんな物語を見せてくれるのか、ここから展開する彼らの物語が楽しみで仕方がない。
ライブアーカイブ映像はこちら:https://youtu.be/9tjvToV6EZY
TEXT BY 後藤千尋
PHOTO BY Hitomi Kamata (KIND)
ヘアメイク:Ayane,Kei
衣装協力:LEGENDA(https://ceno.jp/pages/legenda)、VANQUISH(https://ceno.jp/pages/vanquish)
MV、音声、ボイスコミック、ソーシャルメディアコンテンツなどを“多”次元として展開していくメディアミックスプロジェクト・Arcanamusicaは、それぞれの登場人物が持つ「秘密」をテーマに物語が展開されていく。
突然インストールされた「アルカナムジカ」という謎の配信アプリに出会った川和、苺宮、五十島、渋吉、獣条の5人はアプリ内で付与された2曲をそれぞれがRiZ、闇殿«ダークパレス»、いっくん、シブキチ、レッジェとして歌唱、配信すると瞬く間に人気になる。「2月22日22時×××にお集まりください」とアプリ内で通知、指定された場所に行くと、案内役・スーに導かれ“なんでもひとつ願いが叶えてもらえる”至高の存在=「ワールド」を目指すこととなる。
そんなストーリーが目の前に広がったかのように、いよいよ彼らの初ライブがお披露目された。Arcanamusicaは、2022年2月22日にプロジェクトが発表されて以降、10週連続リリース企画として「アルカナムジカ」内で登場人物5人それぞれに与えられたタロットカードの「正位置」「逆位置」をモチーフとした曲を2曲発表。この日はこれら10曲の楽曲がスペシャルメドレーとして初披露された。
Arcanamusicaのテーマ曲「invisible world」をバックに、スクリーンに登場人物が描かれたタロットカードが横並び一列に配置されると、キャストがステージに迎え入れられ、川和静役の波多野翔、苺宮楽ノ進役のROβiN、MCを務めた五十島慈役の坂上晶、渋吉陸玖役の白石康介、獣条一希役の幡野智宏がそれぞれ自己紹介、MCの坂上晶はプロジェクトを説明。当日フルコーラスで初披露された9月14日リリースのプロジェクトテーマソング『invisible world』の装いからインスパイアされた衣装を身に纏い、ライブがスタートした。
2023年2月22日にリリースされる1stアルバムのタイトルも明らかになったこの日は、ファンにとってはより一層メモリアルな1日となったに違いない。
トップを飾ったのはリア充嫌いなプログラマー・川和静役の波多野翔。アプリ内で使用するアルカナネーム・RiZとして、3月2日にリリースした「正位置」楽曲『My role』をステージ中央で堂々と歌い上げた。波多野は、パソコンで見ている何気ない日常を切り取ったようなプログラミング言語のスクロール映像をバックに歌うが、淡々と冷静に歌い上げる彼から感じられたのは、社会に対する理不尽さ。ステージではずっしりとした鎧を纏ったような、登場人物が持つダークな雰囲気を放った。正も逆も、総(すべ)てが本物の世界へ——タロットカードでは「吊るされた男」がモチーフの川和静という人物が抱える秘密とは、一体なんなのだろうと思わずにはいられなかった。
続いてROβiNが登場すると、空気が一変、色濃さと華やかなパフォーマンスが観る者の目を奪った。自堕落な生活をしている動画配信者の苺宮楽ノ進・闇殿«ダークパレス»役を演じる彼のタロットカードは「悪魔」。「悪魔」の正位置は「裏切り」「拘束」「堕落」「破天荒」「嗜虐的」などの刹那な意味が含まれているが、奇怪な笑みを声高くあげると、ダンサンブルな正位置楽曲『その魔王殿は危なげな程に刹那的─。』をパフォーマンス。“艶やか”、“美しさ”といった形容がよく似合うROβiNだが、楽曲のラストではさらに目を見張るロングトーンとファルセットでステージに爪痕を残した。その美しさの下にも何か隠された秘密があるようだった。
タロットカード「司祭」がモチーフで、優しい教師の顔を持つも、そのプライベートは明かされていない社会科教師・五十島慈こといっくんを演じる坂上晶は、『フィルム越しのモノクローム』でスロウなダブステップに身を委ね、会場を心地よいチルアウトな空間にしていく。一礼し、紳士的な登場からも伺えたが、どこかアンニュイさを漂わせる彼は、他のメンバーとはうってかわって大人な魅力を感じさせた。甘いハイトーンヴォイスを響かせながら、“奪われることの無い自由”をピュアに訴えかけるように歌う姿は、どこか刹那的だった。
疾走感あふれる演奏とハンドクラップで活気付け。『You are my friend!』で縦横無尽に新境地を見せたのは、天真爛漫なお笑い芸人の渋吉陸玖ことシブキチ役の白石康介。「太陽」のタロットカードの印象どおりな陽気な笑顔やラップで会場をすっかりあたためたところで、メルヘンチックな世界を存分に展開した。笑顔で溢れた印象的なステージには、これまでのステージにはないエンタテインメント性の高い空間に、無邪気さをしっかり宿らせ、持ち前の明るさで躍進力のある煌びやかなムードを引き出していた。
出世街道まっしぐらな弁護士にも、悩みはつきものらしい。タロットカード「正義」の獣条一希ことレッジェ役の幡野智宏は、軽快なピアノアタックに捲し立てるようなナンバー『テノヒラダンサー』で支配的な“俺様”らしさを感じさせた。挑発的に会場を煽る攻めのステージは圧巻で、スキルの高い楽曲も安定して披露するほどの歌唱センスで会場を魅了した。
そこから映像のタロットカードの色がモノクロへ反転すると、ライブは後半戦の「逆位置」楽曲がスタート、レッジェの『ストレイアンサー』から景色を変える。Arcanamusicaはタロットカードをモチーフに楽曲が作られているが、出たカードの向きが逆さになると、「逆位置」になり、これによりタロットの「正位置」からカードの意味は変化する。あわせて物語の表情も変化に富む仕掛けになっているから面白い。そんなところを紐解くとこのArcanamusicaというプロジェクトの魅力は倍増。不安や葛藤を歌ったナンバーで違った一面を見せた幡野に続いて白石は、『Are you my friend…?』で「孤独感」「不安感」「第六感」を歌い、同じ“友達”がテーマな楽曲にも関わらず、先ほどとは異なるステージを見せる。自由を歌っていた坂上が『翡翠色のロゼアモール』で悲観的な感情を訴えかけるような求心力あるステージを見せたかと思えば、氷のようにクールな表情でステージに立つROβiNは、『その魔王殿は悲しい程にルルルルルー。』で<少年が受けた母性は見知らぬ顔の付与だった>という衝撃の歌い出しから、寂しく孤独な子守唄を会場にこだまさせた。『My song』を歌う波多野も『My song』とは一変し希望を歌い、歌い終わると別人のような満足気な表情を見せた。これまで私たちに見せてきた表情とは、全く違う。
そんなステージ展開も見事なものだったが、さらに圧倒されたのはスペシャルメドレーの後に披露された新曲『invisible world』。「それでは聞いてください」と白石が新曲を紹介し披露すると、個性の引き立つステージ展開に息を呑んだ。演奏後、「歌っていて楽しかった。」(ROβiN)、「これは良いライブになったんじゃないかと確信しております」(波多野)と話したように、5人の息はぴったり。坂上、白石、幡野の3人が畳み掛けるようにソロパートで一体感を高め、ROβiNのラップパート、狂ったような笑い声から波多野へ繋ぐ流れも秀逸であった。各々のキャラや声を自由自在に操りつつも、5人でしか出せない緩急、さらにクライマックスをきちんと支える幡野のコーラスで最強のチームワークを見せる。どこを取っても抜かりないステージには、敬意を払わずにはいられなかった。この日のステージへ向けた想いが感じ取れるパワフルなステージ。
ライブ後には言葉にならない感情を「皆んなが一緒にいて、わ〜ってなって」とステージ上での感動を伝えたROβiNから、2023年2月22日に1stアルバム『SPREAD』がリリースされることを発表。『SPREAD』というタイトルについて、坂上が「開く、広げる・展開するというタロットの意味があるんですね」と説明すると、これから始まる新章について触れ、白石は「(グッと)くるものがありすぎて、感動しっぱなしなんですけど、これからも5人で歩んでいきます。もっと、もっと高みを目指すので、応援よろしくお願いします」とファンに約束した。等身大のステージながらも、しっかりと着実に歩んだ一歩は、これから先の未来をしっかり照らしてくれるだろうと想像できるようなライブだった。登場人物の体現性はもちろんのこと、何より人の2面性や目に見えない“心の”世界をしっかりと目の前に広げた彼らのライブは、今を生きる私たちにとって必要な視点を提示してくれるものだった。
2023年2月22日は1stアルバム『SPREAD』発売日はプロジェクトがスタートした記念日でもあり、物語が動き出した大事な日だ。頭角を現した期待の新人は、結成から一年の節目にいったいどんな物語を見せてくれるのか、ここから展開する彼らの物語が楽しみで仕方がない。
ライブアーカイブ映像はこちら:https://youtu.be/9tjvToV6EZY
TEXT BY 後藤千尋
PHOTO BY Hitomi Kamata (KIND)
ヘアメイク:Ayane,Kei
衣装協力:LEGENDA(https://ceno.jp/pages/legenda)、VANQUISH(https://ceno.jp/pages/vanquish)